最高裁判所第一小法廷 昭和36年(あ)148号 決定 1961年8月17日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人海老根保久の上告趣意は違憲をいう点もあるが、実質は単なる法令違反ないしは事実誤認の主張に帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。なお、刑法一〇四条の証憑湮滅罪は犯罪者に対する司法権の発動を阻害する行為を禁止しようとする法意に出ているものであるから、捜査段階における参考人に過ぎない者も右法条にいわゆる他人の刑事被告事件に関する証憑たるに妨げなく、これを隠匿すれば証憑湮滅罪が成立するものと解すべきであり、且つまた原判決の是認した第一審判決の確定した事実関係の下では被告人について犯人隠匿罪の成立する余地がないものとした原裁判所の判断は当審もこれを正当として是認する。
よって刑訴四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 高木常七)